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カット犬種の耳毛は抜かなくても大丈夫

こんにちは。東京都町田市のトリマー兼犬猫ごはん講座講師の橋本なみです。

どんよりとした天気が続いておりますが、涼しくなった分だいぶ過ごしやすくなりましたね。雨さえ降らなければ、わんこのお散歩も快適に・・・とまではいかなくても、かなり楽になったのではないかと思います☺

さてさて、今日は犬の耳毛についてお話ししたいと思います。タイトル、

カット犬種の耳毛は抜かなくても大丈夫

何だか大胆なタイトルですが、なぜそう言えるか、カット犬種の耳毛を抜くことによるリスクやなぜ外耳炎になるかなどお話しできればと思います。カット犬種を飼われている飼い主様はぜひ読んでみてくださいね!

カット犬種・・・いわゆるプードル、ビションフリーゼ、マルチーズ、シーズー、ヨークシャ―テリア、ミニチュアシュナウザーなど放っておくと顔の毛がどんどん伸びてしまう犬種のことをここではカット犬種と呼ばせていただきますね。このような犬種は、顔だけでなく、体の毛も放っておくとどんどん伸びてしまうので、定期的なトリミングが必要です。

このような犬種は顔や体の毛だけではなく耳の中にも毛が生えてくるので、トリミングなどでは「耳の中の毛(通称耳毛)を抜く」ということが以前は主流でした。一般的にこのような鉗子を使って耳毛を抜きます。

この鉗子の先はこのようにギザギザの溝があります。

このぎざぎざが毛を挟んで引っ張った時に鉗子から毛がするっと滑らないように滑り止めのような役割をしているのですね。では、そもそも耳毛はなぜ抜かれるのでしょうか?一般的に

耳の通気性をよくすることで、外耳炎などにかかるリスクを軽減する、または予防する。

と言われています(言われてきました)。通気性が悪いと耳の中が蒸れ、外耳炎発祥のリスクが上がるということですね。確かに蒸れてしまうと菌が増殖しやすい環境はなるでしょう。ですが・・・外耳炎の根本の原因を考えると

耳毛があるから外耳炎になりやすくなるというわけではない

のですね。ここで基本のお話しなのですが、耳垢=外耳炎ではありません。耳の中も皮膚と同じでターンオーバーにより古くなった角質が出ます。多少の耳垢というものは出ているのですね。そしてそれを耳の外に出していく「自浄作用」というものが備わっています。人と同じですね!

この耳垢が何らかの原因により明らかに量が増えたり臭いがしてくると何らかの耳のトラブルが考えられます。耳を痒がったり、頭を振ったりという行動がみられることもよくあります。

外耳が何らかの原因で炎症を起こしている状態なのです。これがいわゆる外耳炎ですね。外耳炎が進行すると鼓膜が破れ中耳炎、更に進行すると内耳炎になります。

ではそもそも外耳炎はなぜ起こるのでしょうか?外耳炎が起こる犬と起こらない犬の差は何なのでしょうか?外耳炎の原因は色々と考えられますが、けして耳毛があることが根本の原因ではありません

例えば、アトピーやアレルギーにより皮膚バリアが弱くなっていたり、免疫力が低下することで、細菌や真菌が繁殖しやすい皮膚状態であることが多いのですね。その他にもニキビダニが感染している場合もあります。こういった場合耳の中も皮膚と同様に細菌や真菌が増殖しやすくなり、外耳炎に繋がる場合が多く見られます。

これを読んで分かるように、耳毛は外耳炎の直接の原因ではないのですね。

皮膚の状態がアンバランスになる要因がある二次的に耳の中の環境が悪くなる三次的に耳の中の通気性が悪いと悪化しやすい

というわけですね。なので、皮膚バリアが健全に保たれ、普段から免疫を高めていれば、例え耳毛はボーボーであろうと(笑)外耳炎にはならないのです。外耳炎の原因はその他内分泌異常や、合わない食事から溜まってしまった老廃物を耳垢として体外に排泄しようとして外耳炎になることなどもありますが、皮膚の状態が健康であることも外耳炎の予防という観点から、とても大切なことなのです。

では耳毛はボーボーのままでよい?私は、わんこの心身を満たす手作りごはんを食べ、適度に運動をし、わんことのコミュニケーションを大事に、できるだけストレスのない生活を送らせてあげることを心掛けていれば、耳毛はボーボーで全く問題ない!と思います。

耳毛にも耳垢を外に出す「自浄作用」があります。しかし、外耳炎になった時に処置をする上で、耳毛はある程度取ってあげた方が処置もしやすくなるのは事実かと思います。ではそう言った時に耳毛をツルツルに抜いた方が良いかというと、そういうわけではないのですね。

外耳炎は字の如く外耳が炎症を起こしている状態です。炎症を起こしている状態で毛を抜くことは更に炎症を促進させてしまう可能性もあるということです。そして何より、

耳毛を抜くことは痛い

のです。痛みの感じ方は耳毛の質や量などにもより個体差はあると思いますが、多くのわんこが耳毛を抜かれることは嫌がります。耳の中を拭こうとするだけで反射的に過去の痛い記憶から耳を触られるのを嫌がる子も多く見られのですね・・・。

痛みや恐怖を伴わずに耳毛を処理し、通気性を良くするためには耳毛を気ってあげるのことがベストではあるのです。今は耳毛を切る専用のハサミがあるんですよ✂

トリマーさんであればご存知の方も多いと思いますが、それでもまだまだ耳毛を抜く処理は多く行われているのが現状です。この耳毛鋏、ただの先端の細い鋏ではなく、先端がカーブしています。

そして、毛は切れるけれど皮膚が切れない構造になっているのですね!なのでお値段はそこそこします💦動くわんこを相手に耳の中の毛を処理するのってとても繊細な作業であり、やはり刃物というものは少なからず危険が伴うものなのです。この耳毛鋏は皮膚を挟んでも切れない構造になっているので耳毛を抜く痛みや炎症を促進させてしまうリスクは軽減します。とは言え挟んでしまうと痛みは伴うため、やはり使用には細心の注意は払います。

ですが、こうやって痛みを伴うことなく、炎症させるリスクなく耳の通気性を良くしてあげることも大切なケアの一つではあるかと思います。

ただ、大事な事は

耳毛を抜くことが外耳炎を予防するわけではない。

ということ、そして、

皮膚や体内環境の乱れにより外耳炎になった時(又はなりやすい時)耳毛を処置することは「二次的に悪化させることを防ぐ。」

ということです。ですから、やっぱり何事においても一番大切なことは、普段からわんこの健康をサポートしてあげられる食事(もちろん私は手作りごはんをお勧めしますが)や運動、飼い主とのコミュニケーションなどをわんことの生活にしっかり取り入れることなのですね!それがあれば大嫌いな「耳毛を抜く」という処置は正直必要ないのです。処置をするとしても抜くのではなく「切る」ということがベストであるのです。

まだまだ切るという方法は普及していませんが、トリミングも日進月歩です。今後「わんこの耳毛は切る時代」(笑)になっていけば良いですね。

今日は耳毛についてのお話しでした。トリミングサロンや病院にトリミングをお願いされている方は、そこの方針による処理のやり方になってはくるかと思いますが、何かの参考になれば幸いです。

そして、耳毛を抜かれることが大嫌いなわんこへは、飼い主様が健康面でのケアをしっかりとし、抜かないという選択肢もあることや、耳毛鋏をご自身で購入し「これで切ってください」とサロンや病院にお願いする選択肢(受けてもらえるかは聞いてみてくださいね)もあること、お家でママ(パパ)トリミングをされている方は自分で耳毛を切るということに挑戦してみるという選択肢もあるのです。可能性は無限です☆彡 選択肢は多ければ多い程よりわんこにとってベストな選択をしてあげられる可能性も広がりますよね!

どうぞご参考になさってくださいませ☺

今日もお読みくださりありがとうございました。