こんにちは。東京都町田市のトリマー兼犬猫ごはん講師の橋本です。
今日は「パピー・キトン期の下痢・軟便」というテーマでお話ししたいと思います。
パピーとは仔犬、キトンとは仔猫のことを指します。生後約一年ほどがこのパピー、キトンと言われる時期になります。
時々、仔犬や仔猫の飼い主様から、愛犬愛猫の便の状態がずっと緩い、もしくはよく緩くなるというお話しを聞きます。通常良いうんちというのは、硬すぎず柔らかすぎず、固形で小さめの細長いようなうんちかと思います。
「大きな」バナナ状はそれはそれで食べたものの吸収が悪いことを指すので(食事内容にもよりますが)けして良いうんちとは言えませんが、つかめないような柔らかいうんちは体の中で何かしらの不具合が起こっているような状態と見ます。
便の硬さはどうやって決まるの?
便の硬さは「水分量」によって決まります。
うんちというものは、食べたものの栄養や水分が体に吸収された「残りかす」と「水分」、「腸内細菌」、「はがれた腸粘膜」から成ります。栄養は主に小腸で吸収され、水分は主に大腸で吸収されます。軟便や下痢の状態と言うのは、大腸で十分に水分が吸収されていないため、便の水分量が増えている状態です。
どんな時に便が柔らかくなるの?
一つは蠕動運動性の下痢です。腸の蠕動運動が活発になりすぎて、大腸での水分吸収が間に合わず、十分に吸収されなかった水分によって便が水分を含んだ軟便、下痢のような状態になります。よく緊張してお腹をくだすような時は、交感神経バランスが崩れて蠕動運動が活発になりすぎている状態であり、ストレス性の下痢などですね。合わない食材を体から早く排出しようとして下痢になる場合もあります。
あとは、分泌性の下痢と言って腸からの水分の分泌量が増えることによる下痢があります。これは細菌・ウイルス感染によって起こります。食あたり、食中毒がこれにあたります。
パピー・キトン期の軟便・下痢は?
例えば、仔犬や仔猫を我が家に迎え入れた時に一時的に下痢をしてしまうような場合は、環境の変化によるストレスが考えられます。
しかし、飼い主様が悩まれる仔犬や仔猫の軟便や下痢は、殆どが一時的なものではなく、継続して続いている状態です。このような悩みで、病院から処方された療法食を食べているけれど直らない、という場合があります。
下痢や軟便の時に処方さる療法食は、低脂肪のタイプや、腸内細菌を活性化する食物繊維が配合されていたり、加水分解タンパクといってタンパク質を吸収しやすくするために消化された形に近いアミノ酸に分解したタンパク質を配合したものなどがあります。
このような療法食を食べてなぜ下痢や軟便が解消されないのか・・・
絶対と言う根拠はないということを前提に、あくまでも私が感じていることをお話しします。根拠がないので私の経験からの考えであることをご承知の上お読みいただけると嬉しいです。私が感じていることは、
消化機能の未発達による軟便・下痢
です。
仔犬や仔猫というのは、まだまだ消化機能が十分に発達していません。人の乳幼児と同じです。人の赤ちゃんは生後半年前後まで母乳やミルクのみで育ちます。犬や猫では3~4週齢がこの時期にあたります。
人の赤ちゃんは離乳食を始める時に10倍粥から始め、だんだん水分を少なくしたお粥へ、またお粥に慣れたら柔らかくした人参など一種類の野菜をすり潰してお粥に加え・・、徐々に他の野菜も加え、それらが食べられるようになれば卵や魚、肉など動物性のものもごく少量から加えていきますね。
生後半年前後から離乳食を始め、離乳食を卒業するのも1歳半くらいでしょうか。赤ちゃんの消化機能の発達に合わせて徐々に徐々に食べられるものを増やしていくのが人の離乳の形です。
犬や猫に対しては、ドッグフードやキャットフードが犬や猫のごはんの主流になった今、離乳からドッグフードやキャットフードがあげられることは一般的かと思います。水でふやかしたり、缶詰を使ったりと、形態は様々かと思いますが、あくまでも離乳から食べるのはフードがメインです。
消化機能が十分に発達していない時期に沢山の食材が体に入ってくることが、うまく消化できない理由の一つだと感じています。フードには、タンパク源・糖質源・脂質・食物繊維なども一種類ずつではなく、複数のタンパク源・穀類・脂質・食物繊維の入っているものも沢山ありますね。それらに加え、栄養素の微調整のために添加されるビタミン・ミネラル・アミノ酸類など・・・。全部合わせると軽く20種類は超えると思います。
けしてフードが悪いと言っているわけではありません。タンパク源も糖質源も脂質も食物繊維も全て体には必要です。しかし、消化機能がまだ十分に発達していない(発達段階の)パピーやキトンが、何十種類もの原材料が入ったフードを上手に消化吸収できるかというと、個体によっては十分に消化吸収できない子もいます。
ですから、いくら消化に配慮した療法食であっても、あまりにも原材料が多すぎて消化が十分にできず、療法食を食べているのに下痢や軟便が治らない、ということが起きていることがあります。
食材に対するアレルギーの可能性もありますが、アレルギーというよりは、やはり消化への負担から来る軟便・下痢が多いように感じます。
本来ならば、離乳はできるだけシンプルに一種類の肉から始め、徐々に他の種類の肉を食べ、糖質や野菜なども加えていくというのが犬や猫にとっても自然な離乳の形かと思います。
この工程を踏まずに、沢山の食材が入っているフードを摂っていることが当たり前になってしまうと、なぜ愛犬愛猫が下痢や軟便になってしまうのか理由が分からないのです。もしかしたら、フードの中の何か一種類の食材だけが合わなくて下痢や軟便になっていたとしても、原材料が多すぎると何が原因になっているかも特定するのは困難です。
このようなパピー・キトン期の下痢・軟便には、食材をシンプルにしたごはんで下痢や軟便が治まることもあります。また、フードであっても消化機能が発達してくると下痢や軟便が治まることもあります。
消化機能が未発達な時期の下痢や軟便は、まずは寄生虫感染や背景に病気が潜んでいないかは、必ず動物病院を受診した方が良いでしょう。
その上で上記の問題がなければ、できるだけ食材の数を減らし、何が食べられるのか、どんな調理が良いのか、探っていくことが必要です。食材がシンプルであっても、基本が整っていれば栄養バランスが崩れることはありません。(栄養バランスに関しては、前回の投稿をご参考ください。)
講座には、仔犬や仔猫の飼い主様もいらっしゃいますし、軟便に悩む飼い主様もいらっしゃいます。そのような子でも、食事性の軟便・下痢であれば克服することは可能です。
軟便・下痢はけしてパピー・キトン期だけの問題ではありません。同じ理由で成犬になっても軟便や下痢をしてしまう子もいます。愛犬・愛猫にどんなごはんが良いのか、まずはシンプルな食材から試していくことも一つの方法としてとても大事な部分かと思います。
「できるだけシンプルなごはんの内容にして、どの食材だったら良いのか、どんな分量だったら良いのか」
この工程をすることがとても有効です。(もちろんベースの知識は必要です)本当はごくごくシンプルなことなのですが、前回もお話しした栄養バランスの心配や犬にはドッグフード、猫にはキャットフードという概念がこのシンプルな行程を難しくしてしまっているのはとてももったいないことです。
私の講座で受講後無期限のメール相談によるアフターフォローを付けているのは、このような軟便・下痢という症状に対しても、飼い主様がやっていく中で分からないことがあれば頼っていただける場でありたいからです。(診療的な相談にはお乗りできませんが、多角的に様々な原因を考えてアドバイスはさせていただきます。)
「何だか軟便気味だけどこのごはんで良いのかな?」
「嘔吐しちゃったけど何が原因なんだろう?」
など、いざ手作りごはんを実践した時に分からないことってよく出てくるのですよね。下痢や軟便のお悩みにもできるだけ解決のフォローができればと思っています。
今日は「パピー・キトン期の下痢・軟便について」というテーマでお話ししてきましたが、
まずはパピー・キトン期というのは、消化機能が発達段階であること、個体によってはフードを十分に消化吸収できないこともあるということをご参考にされてみてください。
パピー・キトン期だけでなくアダルト・シニアの子の飼い主様にも参考になれば嬉しいです☺
5月の手作りごはん講座日程出ました。日程は下記Googleカレンダーよりご覧ください。
今日も最後までお読みくださりありがとうございました🌸