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犬猫の混合ワクチン 正しく理解して適切に接種する③

こんにちは。東京都町田市のトリマー兼犬猫ごはん講座講師橋本なみです。

一昨日から手作り猫ごはん講座の募集を開始しました。講座概要は、ホームページ「COURSE」の詳細ボタンからご確認いただけます。また日程はホーム画面下のGoogleカレンダーよりご覧いただけます!

さて、今回も犬猫の混合ワクチンについて②の続きをお話ししていきたいと思います。

前回はワクチンのガイドラインの内容の一部やガイドラインに基づく研究、抗体が持続するワクチンプログラム、私の願いなども書かせていただきました。前回の最大の焦点はガイドラインによる

「3年より短い間隔で接種すべきではない」

という点と

「免疫持続期間ははるかに長い可能性が高い」

という点です。ではその続きをお話ししていきます。

【免疫が持続しているかを知るには?】

接種した混合ワクチンの抗体が残っているかどうかを調べるために、『抗体検査』というものがあります。この検査キットを扱っているかは動物病院によりますが、血液採取によりワクチンの抗体が残っているかを調べて必要に応じて混合ワクチンの接種を行えるようにこのような検査があります。

この抗体検査では、コアワクチンのみの抗体価が測定できます。

「コアワクチンのおさらい」犬の混合ワクチンは最低5種混合ワクチン、猫では3種混合ワクチンでしたね。犬であればその5種の中の3種(犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬伝染性肝炎)がコアワクチン、猫であれば3種混合の中の全てがコアワクチンでした。

つまり、抗体検査で調べられるのは猫であれば3種混合ワクチンを接種すれば3種全ての抗体価が調べられますが、犬では5混合ワクチンを接種してもそのうちの3種のみの抗体価しか分からないということです。

【抗体検査で感じる矛盾点とは…】

先ほどお伝えした通り、犬の混合ワクチンは最低でも5種混合ワクチンですが、抗体検査で抗体価を測れるのは3種のみということです。

コアワクチンに含まれない犬アデノウイルスⅡ型感染症はコアワクチンの犬伝染性肝炎を接種することで同時に予防ができるのですが、残りの一つ「犬パラインフルエンザ感染症」については抗体価が測定できません。

犬パラインフルエンザ感染症はコアワクチンの3種ほど致命傷になる感染症ではないのと、人のインフルエンザのように変異するウイルスであるからではないかと思います。

致命傷になる可能性のあるコアワクチン(3種)の抗体価が重要視されているのだと思います。

抗体検査はコアワクチンの抗体価を測定できることで、その個体の抗体価により接種する必要があるかまだ接種しなくてもよいかの判断材料にはなります。

しかし、一つでも抗体価が落ちているものに合わせて混合ワクチンを接種するとなると、残りのコアワクチンや、抗体検査では測定できない犬パラインフルエンザの抗体価が仮に残っていたとしても、抗体価が落ちているものに合わせて5種以上の混合ワクチンを接種しなくてはいけません。

単体のワクチンがないため、抗体価が落ちているワクチンのみの接種を行うことができないのです。

【効果のないor不要なワクチン接種】

効果のないor不必要なワクチン接種についていくつかあげていきます。

①抗体価が残っているワクチンの再接種

→先ほどお伝えしたように、抗体検査は抗体価が残っているかを知る目安にはなりますが、一つでも抗体価が落ちたものに合わせて混合ワクチンを再接種するとなると、まだ抗体価が残っている他のワクチンまで接種しなければいけないのです。これは不要な接種となってしまい、抗体価の落ちたものだけを接種したくても単独のワクチンがないのが現状です。

②7種混合上に含まれるレストスピラ症のワクチン

→ワクチンは製造法によって生ワクチンと不活化ワクチンがあることを①の投稿でお話ししました。

犬の混合ワクチンの7種以上に含まれるレストスピラ症は不活化ワクチンですが、免疫持続期間は半年ほどしかありません。レストスピラは川遊びなどをする場合に保菌動物である齧歯類(ねずみなど)に汚染された水などから感染する可能性があるためライフスタイルと地域の発生状況によっては接種した方が良いワクチンですが、半年しか免疫が持続しないため川遊びをする時期から外れた時期に接種をしても意味のないワクチン接種になってしまいます。

ですが、一般的にこういったことは知られていません。

また、レストスピラ症は250種以上の血清型(種類)がありワクチンで予防できるのは4種程度なのです。日本で発生が確認されている血清型と混合ワクチンに含まれる血清型が一致しているのはカニコーラとイクテモヘモラジーの2種のみです。

レストスピラ症が含まれる7種以上のワクチンを接種しても、血清型が一致していないと感染を予防することはできません。

③抗体がつかないノンレスポンダー/ローレスポンダーの存在

遺伝的にワクチンを接種しても抗体がつかない個体がおり、そのような個体をノンレスポンダー又はローレスポンダーと呼びます。

日本の場合、混合ワクチンは毎年の接種が一般的であり、抗体検査はワクチン接種の時期が来た頃に抗体価が残っているかどうかを調べるために行われることが多いです。そこで抗体価が陰性となれば再接種が必要という目安になります。しかし、②の投稿でご紹介した研究でも分かるように、コアワクチンの抗体は多くの個体で非常に長い期間持続します。

特にパルボウイルスは一度接種すると抗体価が下がりにくいワクチンです。もしワクチンを接種して一年後の抗体検査でコアワクチンの抗体価のどれが一つでも陰性であればノンレスポンダー(ローレスポンダー)の可能性もあるのです。

ノンレスポンダ―(ローレスポンダー)にも関わらず、それに気づかず毎年接種することはワクチン接種の意味はなさなくなり、体にとって負担になる可能性もあるのです。(疑われる副作用は②の投稿でお話ししています。)

接種したワクチンの抗体が付くかどうかを調べる抗体検査は、本来は混合ワクチンを接種して確実に免疫が付く4週間後に一度行われるべきなのです。そこで仮に陰性となれば、ノンレスポンダーであることが分かるのです。もしもそのタイミングを逃し、一年後に抗体検査をして陰性となれば、そこで再度接種しその4種間後に必ず抗体検査を受けた方が良いと思います。

そこで抗体価が残っていれば、ノンレスポンダー(ローレスポンダー)ではないと判断でき、もしそこで抗体価が残っていなければノンレスポンダー(ローレスポンダー)だと判断できるのです。

さあ、今回は抗体検査についてや、抗体がつかない個体についてお話しました。今回も長くなりましたが、なかなか一般には知られていないこういったことをしっかり理解しようと思うと、このように知っておくと良いことは沢山あるのです。

自分に接種するワクチンであれば、そのワクチンについてどこまで知って接種するかどうかは個人の判断で決められます。ですが、犬や猫は自分で接種を選択することはできません。全ては飼い主様の決定権によるのです。

ですから、接種するかどうかを選択する飼い主である私たちが、最低限知っておいた方がよいことかと思いますが、この最低限の情報がなかなか一般的に知る機会がないかと思います。

何も知らずに接種するのと理解した上で接種するのでは大きく違うからです。今回が3回目である混合ワクチンシリーズは次回で最終回になります。

東京は何だかすっきりしない天気が続いていますが、まだまだ蒸し暑く気温も高いです。みなさん、体調にはお気をつけておすごしくださいね。それでは今日もお読みくださりありがとうございました(o^―^o)